春から夏にかけては、肌トラブルの多い季節だ。産業医の池井佑丞さんは「春~夏の皮膚科患者数は冬の時期の1.2倍で、気温が高くなるにつれて肌トラブルは増えていく。特にこの時期に目立つのが、花粉皮膚炎、寒冷蕁麻疹、アトピー性皮膚炎だ」という――。
顔に手を置く女性
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春~夏の皮膚科患者数は冬の時期の1.2倍

冬が終わりをみせ季節は春へと向かい、寒暖差の大きい季節になりました。季節の変わり目は体調管理に注意されているという方も多いと思いますが、この時期は肌トラブルが始まりやすい時期でもあります。

原因は、花粉だったり、気候や気温差だったりといくつか考えられますが、この時期に肌トラブルを起こされている方は非常に多いです。皮膚科の患者数は徐々に暖かくなり始める3月ごろから夏にかけて、冬の時期の約1.2倍にも増えます。気温が高くなるにつれて肌トラブルが増えるということに関係しています。

皮膚科を受診される患者さんの症状で1番多いのは湿疹、2番目はアトピー性皮膚炎、3番目に足白癬(いわゆる水虫)、次に蕁麻疹と続いています。これらは全て気温や湿度に影響を受けやすい疾患と言えるのです。[古江増隆、山崎雙次、神保孝一ほか「本邦における皮膚科受診患者の他施設横断四季別全国調査」日皮会誌:119(9)、1795-1809、2009]

今回はこの時期に特に多い花粉皮膚炎、寒冷蕁麻疹、アトピー性皮膚炎について、お話できればと思います。

まぶた、頬、首に症状が出ることが多い花粉皮膚炎

1.花粉皮膚炎

スギやヒノキなど春に花粉が飛散すると、くしゃみ、鼻水などの症状のほかに、肌の痒みや赤みに悩まされる人がいます。花粉皮膚炎の患者数は明らかになっていませんが、環境省から公表されている疫学調査の結果によると、花粉症の有病率は2019年時点で全体で42.5%、スギ花粉症で38.8%、そして10年間で10%以上も増加しています。(環境省「花粉症環境保健マニュアル2022 2022年3月改訂版」)

花粉皮膚炎では、花粉が付着しやすいまぶたや頬、首に症状が出ることが多く、かゆくなって赤く腫れ、乾燥が進み、なかには赤いところが盛り上がって発疹のようになる人もいます。症状が長引くと皮膚がごわごわとした厚みになったり、掻いてしまったところが傷となりじくじくしたりすることもあります。

何となくお化粧のノリが悪い、肌が敏感になっているなどと感じる場合には、早めに対策を始めると良いでしょう。治療には花粉症と同じく、慢性の炎症をコントロールすることを目的に連日長期間にわたって服用する抗アレルギー薬や、急性の症状を改善するための抗ヒスタミン薬が用いられますが、1番の基本対策は花粉を避けることです。マスクや眼鏡、ハイネックの服などでしっかりガードしましょう。帰宅後は手洗い、洗顔、できればシャワーを浴びて髪の毛などについた花粉も全て洗い流してしまうのがベストです。

花粉が多い日は、晴れた高温の日、乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日と言われています。症状がつらい方は可能であれば在宅勤務へ切り替える等、柔軟な働き方を取り入れるのもおすすめです。花粉症の本格シーズンを前に厚労省や環境省からも呼びかけられています。花粉飛散の多い昼前後や夕方の外出を避けたり、テレワークを活用したりしましょう。